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July 13, 2007

転校生 さよならあなた

これだけたくさんのシネコンがあるのになかなかそのルートに乗らない映画も
いまだにあるのです。
 急遽上映館が増えたようですが、最初はどこまで行ってみようかと思いました。

 大林宣彦監督のセルフリメイク「転校生」。
 市川昆監督の「犬神家の一族」や「ビルマの竪琴」とはまた違った、映像作家
(あくまで映画作家ではなく)としてのこだわりが感じられた素敵な作品になって
いました。

 それではネタバレ大いにアリで行きますので楽しみにされている方はココから先は
読まないでくださいね。

 実は前作の「転校生」はあまり好きではないのです。いい映画とは思いましたが
前半のドタバタと後半の彷徨がしっくりこない。トーンダウンする感じで、重く
感じられるのがあまり好きではなかった。
それでも繰り返し見ていた。それはやはり大林映画としての基本だからだ。
その後作られる「さびしんぼう」「時をかける少女」のほうが尾道映画としては
出来がよく、最高峰は「ふたり」だと思っています。
 旧作の「転校生」はATG(アートシアターギルド)制作で松竹配給として
1982年ゴールデンウイークに公開された。2本立てで併映は「オンザロード」。
チケットが当たって十三のサンポードアップルシアターで見たのを覚えている。
その数年後、GWに暇だったので普通電車を乗り継いで尾道までいった。
そんなふうに訪問したくなる町になっていったきっかけがこの「転校生」だった。

 さて新作は長野が舞台。
 長野で映画を撮影してほしいと依頼があり、企画が1本だめになったタイミングから
生まれた作品となったのが今回の「転校生」となった(映画秘宝より)。

 長野が舞台ではあるがはっきり言おう、この作品は尾道映画だ。

 えっ!と思う方もいるかもしれないが、映画を見ればわかる。主人公は尾道から
きて、尾道へ帰る。そういう血筋を映画だ。ちゃんと尾道シーンもある。
 あの尾道のうどん屋は旧作の一夫の家ではないか?
というわけで尾道映画の系統に加えていい内容になっているのだ。

 転校してくるのが一夫のほうということや、一夫が母子家庭だったり、
和美の家がそば屋だったりするのはシナリオとしての変化をもたせているが、
前半話はほとんど一緒。台詞までところどころ一緒なので懐かしさが先にたつ。
先生は志保美悦子から石田ひかりに変わっているのもなんかおかしくもうれしい。
だって石田ひかりは大林映画で2回主演をしている卒業生。おかえりなさいという
感じがした。ゆうばりでサインをもらったのを思い出した。

 大林映画独特の世界で新たに展開される「転校生」はどこか子どもたちへ向けての
視線が弱く感じられた。
 多分この映画、昔のファン、おじさんに向けての映画として成立させてしまっている。
今の子どもたちは無視に近い気がした。
 旧作は少年、少女の心が入れ替わることにより思春期の心も身体も知るというのが
テーマとしてあった。
 しかし今回はそれ以上に重くのしかかってきたのが一美の死だ。
 そう今回一美は死んでしまう。
心が入れ替わったままその運命を受け入れてしまう一夫。その恐怖の体験はどんな
ものか想像が付かない。 自分の本当の肉体は元気なのに、今いる自分の身体は
死に近づいている。
 だからふたりが病院をぬけだし、あてのない逃亡のたびに出るのが非常に重いが
その理由が理解できる。
 ふたりで来るべき死を受け入れるための旅だ。ココが前作よりいいと思った。

 お約束通り、ふたりの身体はもどりるが、単純なハッピーエンドは迎えない。

 一美が死を受けいれ、一夫は彼女を見届けて未来への道を歩み始める。

 別れがあるのが人生だ。

このあたりの展開は賛否の或るところだと思うが、大人の映画になったと感じるのは
このあたりだ。単に難病物をくっつけている韓国ドラマとは違う。


さて、大林映画といえば「A MOVIE」がトレードマークだった。
映像作家としてのひとつのマークとしてずっと使ってきたが、やめてしまっていた。
コレが今回復活しているのがうれしかった。
 そのためか、今回編集に力が入っているようで、かなりのコマ落としをやっている
らしい。通常秒間24コマが基本だが、なんと23コマやシーンによてっては
8コマまでおとしているらしい。
それは俳優の演技レベル合わせたり、テンポを良くしたりする効果があるらしい。
確かに食事シーンはその効果が出ていたと思われるが、そこまで細かく編集している
とは恐れ入ります。

大林監督は尾道が「男たちのYAMATO」のセットを売りものに観光客を呼込んでいた
ことに反対しているという記事を読んだ。
尾道を映画で有名にしたのは大林監督だが、それは舞台としての尾道を映像に残す
ことが結果として観光に繋がったのであって、決して映画のロケセットをネタに客を
呼ぶことではない。
でも元になったのは大林監督がきっかけであったことは事実で、このあと作られる
尾道シリーズはご当地映画製作を広め、各地にフィルムコミッションを作るさきがけと
なっていった。
今回の長野ロケも、長野側からの要望があり実現したとのこと。しかしなんとも
居心地悪い気がしたのは私だけだろうか。だから尾道映画の延長線上であると考える
ことでしっくりきたのである。

さてこの映画評判が悪い。というか妙だ。映画公開前のメディア露出は多く感じたが、
公開劇場は少なく、上映回数も少ない。
キネ旬の星取り票ではほとんどか星1個。ひとりだけが4個と極端。
何でかな・・・・・・・? 少々大林監督のブランクがあいたことが原因?
それともあの世界観が理解されなくなった?
確かにかなりクセのある演出ではあるが私は大好きで浸れるのだが・・・・・。

まあとにかく好き嫌いせずに食べてほしい。

次の「22才の別れ」も大期待作ですが・・・・・・公開劇場がまた少なそう。

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