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May 06, 2011

わたしを離さないで ~運命を受け入れる姿に賛否あることが作者の狙いではないですか

「わたしを離さないで」
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監督:マーク・ロマネク
出演: キャリー・マリガン、アンドリュー・ガーフィールド、キーラ・ナイトレイ
シャーロット・ランプリング

 ネタバレありで行きます。
 楽しみのされている方はご注意ください。

 この映画いろんな見方が出来ます。ひとりの男とふたりの女の三角関係を中心展開
するラブ・ストーリー、とか設定がSF、近未来的なところがあり、時間は過去ですが
もうひとつの私たちが住む世界、その別の道をたどった場合の私たちの物語のように
も思えます。臓器移植と生命という問題、それでも人は生きていく。奴隷制度は
無くなったがブロイラーのように育てられた人間にはなんの人権も認められていない。
そんなさまざまなものが織り込まれてこの映画は成り立っています。

 人の命が100歳まで伸ばすことが出来た世界。そこでは寄宿舎で子どもたちが何の
問題も無く育てられていた。学び歌い健康を管理され、恋愛は自由で時折開かれる校内
のマーケットを子どもたちは楽しんでいた。でも彼らには将来が決められていた。
一人の新任教師が本来、子どもたちには将来は可能性にあふれていることを示すが、
即排除されてしまう。このプロジェクトは国が行っているためだ。
やがて18歳をすぎると寄宿舎を出て外の世界で時を待つことになる。それまでの自由
な時間を楽しむのだが、決してその決められた将来にそむくことなく彼らはミッション
を完了していく。本当の愛を証明することが出来れば延長されるという噂を聞きつけた
ふたりは延長を申し出るのだが・・・・。

 「死」という言葉が出てこなかったように思う。あくまで「終了」であり、劇中では
「complete」とされていた。つまり彼らの生きる目的はミッションを完了させることで
それが何よりも大事なのだ。だからそれに対して反抗も拒否もしない。なぜか?
その心理を描くのは難しいと思うが、そういった人間を作り出しているこの世界に私は
恐怖を感じた。大量に飼育される鶏と同じに健康な臓器を確保するためにクローンを
育てているのだ。こんなことが出来るはずが無い、人間には感情があるから絶対どこか
で抵抗するはずだと映画を見ていたのだが、それがなく終わってしまう。それは作者が
この映画を見た我々に突きつけた課題だと思った。
この映画のような現実は無いが、一歩間違えば出来てしまう。以前「私の中のあなた」
で描かれたものは姉の臓器のために妹を臓器移植の対象として生む(作る)という
内容だった。このような提供者を作ってしまうという地続きの世界をこの映画は描い
ているのだ。

宗教もこの映画の中では描かれなかった。生死感に結びつく、左右される問題で、
彼らが宗教に触れた場合に決して都合のいい方向に向かない、ストーリーのコント
ロールが難しくなるためか。また現実の一般社会的にも物議をかもすために避けたの
かもしれない。だからこの架空の世界が成り立っている。現実ではまず成り立たないと
思えるのはココだ。

 でも、それにしてもこのようなことを考えることが出来る世界に我々は住んでおり
つい先日も臓器移植で助かった命の話題が新聞、ネットでにぎわっていた。そこに潜む
問題点についても我々は目を向けなくてはならない。決してこの映画のような世界を
作り出すことのないように。

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