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February 07, 2016

「ベニスに死す」における「美」について ~#ベニスに死す #ルキノ・ヴィスコンティ

 ルキノ・ビスコンティ監督の「ベニスに死す」が好きだ。
何度見たことかわからないほど繰り返し見ている。
あの淀川長治先生も好きで日曜洋画劇場で放送されたことがある。
原作はトーマス・マンの小説で主人公のアッシェンバッハは小説家、映画では作曲家に
変更されている。大きな違いはこの主人公の設定でこれは映画という媒体で表現するときに
映画は文字、映像、音楽を組み合わせた芸術であり、その芸術の「美」を映画で語る
ための変更と思われる。
 物語は初老の作曲家がベニスに静養にやってきてそこで出会った少年の姿を見て
自身の持っていた「美」の概念が打ち破られ、やがてその少年の「美」の虜となり
狂気の世界へ足を踏み入れていくというもの。その「美」そのものの少年タジオが
映画の歴史でこれ以上の「美」が表現されたキャラクターを見たことがない
ビョルン・アンドレセンが演じており、彼の存在がなければこの映画は成功しなかった
だろう。また、マーラーの交響曲第5番第4楽章「アダージェット」と映像が
素晴らしく、このようなゆったりと芸術を楽しむことができる映画はそうそうない。
この雰囲気に酔えるので私は繰り返し見てしまうのだ。
 ところでケン・ラッセル監督のマーラーの生涯を描いた映画「マーラー」の中で
「べニスに死す」をパロディにしているシーンがある。ケン・ラッセルらしい滑稽さが
感じ取られ思わず吹き出してしまうシーンで「べニス死す」を見た後に見ると
マーラーへの理解が深まりかつ口直しちょうどいいのでお勧めする。
 今回「映画と小説」というテーマからこの原作を読み直そうとしたのだが、断念した。
固い、難しい、しんどい。小説とはいえ情景が浮かばないし、固い文体が意味を通じ
づらいものにしておりついて行けなかった。高校生の時に読んだのだが、まあその時も
どこまで読めたか、理解できたかは怪しいものでよく覚えていない。
なので、映画と小説の全体の比較はちょっと無理。なのでラストシーンだけを小説と
「ビスコンティ秀作集Ⅰべニスに死す」(新書館)にある翻訳された脚本を使って
比較してみる。
 このシーンはタジオを見ながらべニスの海岸でアッシェンバッハが死に至るシーンで
タジオの一番美しい姿を見ることができるシーンだ。最初にこの映画を見た時からこの
シーンの意味するものは何か?気になっていた。多分感じ取ればいいことで見れば分かる
シーンではあるが、ビスコンティはアッシェンバッハに自身の姿を映していると思え
その考えが知るたかった。それで脚本をみるとこのシーンにはアッシェンバッハの台詞が
あることが分かった。瀕死のアッシェンバッハがタジオの姿を見ながら「美」ついて語っている。
要約するとこう。
「美だけが神聖であると同時に目に見えるもの、感覚に属するもであることが分かった」
「芸術家はエロスを見出さずに美の道を通ることはできない」
「芸術家は賢くも気高くもない、見せかけの教養、欺瞞にすぎない」
「芸術家の行きつく先は奈落であり、それからは逃れることができない」
というようなことが書かれていた。あのシーンでこれらのセリフは一切削除されていた。
削除されたのは正解だと思うが、果たしてこの意味が伝わるかといえば少々わかりづらい。
ではこのシーン、小説ではどう書かれているかというと、海岸に出てきたアッシェンバッハの前でタジオが仲間とケンカをはじめる。その描写が詳細に書かれており、その後
喧嘩に負けたタジオが浅瀬へはいり、片手をあげるポーズをとる。あの映画のシーン
そのままに描写されている。しかしアッシェンバッハの感情をあらわすセリフは小説に
無かった。実は少々前のページで芸術を語るくだりはあるので、映画では小説版のそれを
踏まえてラストシーンにセリフを重ねようとしたのではないだろうか。
しかし意味するところは感じ取ってほしいという願いであのシーンにセリフはなくなったと思う。
やはりここは見て読み解くシーンなのだ。「美」は神聖であり見えるもで、「美」は音楽で
も小説でも映画でも描くことはできない、神が作られるものということらしい。タジオ(ビ
ョルン・アンドレセン)の顔、姿をみれば納得してしまうのである。
ところでトーマス・マンは小説の中でダジオをこんな風に表現している。「蒼白く優雅に
むっつりとしている顔は蜂蜜色の髪にとりかこまれ、(略)優雅で神々しいきまじめさを
たたえていて、最も優れた時代のギリシャ彫刻をおもわせるが、(略)自然の中にも
造形芸術の中にも、これほどりっぱにできあがったものはいまだかつて見たことがない~」
トーマス・マンがビョルン・アンドレセンを見たらどう言っただろう。


以前、依頼があって書いたものの転載です。

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