監督失格 ~感想を書くのにとっても時間がかかりました。
「監督失格」
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監督:平野勝之
出演:林由美香、平野勝之
この映画を見るのは正直勇気がいった。
何を見せられるのか? ものすごく怖い思いをして映画を見ていたのだ。
「由美香」について
映画の前半は「由美香」もしくは「わくわく不倫旅行」の総集編。
だから味気ない編集で終わっている。本編はDVDで見たがこの中で
平野監督の由美香さんへの思いがにじみ出ているが同時にドキュメントを
サスペンス性を持たせて魅力ある映画になっている。北海道までの自転車旅行。
最初のラブラブ気分からやがて由美香さんの不機嫌が始まり、それでも仕事
だからと割り切って何とか目的地まで到達する二人。平野監督は仕事よりは
由美香さんへの思いが強くそれを作品(仕事)として完成させるには彼女に
食糞させなければならないという使命と葛藤がある。無茶苦茶な内容で、
表の世界に出してはならない内容だ。それを骨抜きにして約1時間程度で
見せてしまうのだから。ラストの由美香さんの不機嫌さは一体なんなのか?
平野監督の男としてその女への甘えが受け入れられていないような、見ていて
かわいそうであり不快なシーンだ。
「流れ者図鑑」について
こちらは未見。しかし「監督失格」の中で顔を隠して映し出されるのは松梨智子監督。
平野監督は由美香さんの代わりを探して松梨監督と再び北海道旅行に出る。
「監督失格」の中で松梨監督の顔が隠されているのは本人の了解が取れなかっただろう。
松梨監督といえばインディーズの女王と呼ばれ、インディーズ映画を多数発表してきた
女性監督。個人的にはゆうばり映画祭でお話をさせていただいた。
「愛は惜しみなく奪う」が傑作!とさよならパーティで感想をお伝えしたら、
後日ビデオを送っていただき、わが家の家宝にしている。
松梨監督は後に「映画監督になる方法」という傑作映画を発表。DVDも
出ているが、このなかで「流れ者図鑑」のネタを使っている。インディーズ映画の
裏を暴くコメディで数々の裏ネタが出てくる。オーディオコメンタリーを聞くと
松梨監督は結局「流れ者図鑑」を見ていないらしい。あれは平野監督のもので
自分に求められているものが理解できなかったといったようなことが語られていた。
この「映画監督になる方法」の最後には監督の死を記録した映像を公開する話に発展し
今回の「監督失格」へ結びついていくかのようで面白い。あわせてみることをオススメ
する。
さて、松梨監督は「ハッピー・ダーツ」という映画でメジャーデビューしたのだが
その後噂を聞かないので調べたら監督業やめていました。ホームページ上でメジャー
で映画を作ることは自分の思い通りにならないことが多いことや監督としての目的を
失ったというようなことが書かれていました。作品全てを見たわけではありませんが、
インディーズでかなり好きに面白い作品を発表されていた。そのエネルギーが磨耗した
ということでしょうか? 今は何をされている不明です。 ファンの一人としては
非常に残念に思います。
「監督失格」へもどって
そしてあの死のビデオです。
由美香さんが死んだ記事を写真週刊誌で見たときに既にビデオがあることが記載
されていました。しかしそれはあくまで噂でしかありませんでした。由美香さん関連の
本やDVD、特集上映などがあり5年もすればもうこちらとしても忘れていたの
モノでした。それが映画館で映し出されるとは・・・。
見ている途中、そのシーンが近づくと私は見たくないのでかばんを持って劇場を
出ようかと思いました。「由美香」の食糞シーンより見たく無いシーンです。
でも、そのままおかれたカメラが母親の号泣を延々と写し、スクリーンに映しだされ、
それが怖く逃げ出したいと思いながらも圧倒されて見てしまいました。あの時一度
カメラの向きを調節したのはなんだったのでしょうか?
不思議な力が働いていたかと思う映像です。由美香さんが自分の死までも映像ネタと
して提供し最後まで役者であったことを示した映像でした。そして同時に回りをこんな
に巻き込みながらでも愛されていたことが分かる映像でした。平野監督の淡々とならざるえない気持ちが痛かった。あのときからこの映画のラストの疾走まで彼は変われ
なかった。ラストの疾走で彼はどこへ向かったのか?いずれ答えが見られるのか?
監督失格→監督廃業 ではないかと思う。もう出来ないだろ。自分を被写体するには
由美香さんが必要でその由美香さんがいないのだからもう撮れないのでは
ないか。それは自転車三部作の2作目3作目で証明されている。
「監督失格」を見終えて。
この内容の映画、映像がTOHOシネマズの劇場で公開される、スクリーンに
映し出されるのはやはり異常だ。こんな内容の映画を公開する前にもっと他の
映画を上映すべきだ。平野監督のプライベートな映像作品で他人に見せるものでは
ないと思った。どこまでも彼の私的な思いの映画で他人は見てはいけない。
それにコレが「一般」扱いというのにも驚かされた。小学生でも見られる、小人料金
設定があるのだ。コレは一体どういうことだ。本当に映倫は映画の内容に無関心
なのだと思った。TOHOシネマズだけで上映しているのだから劇場側の判断で
見せないようにすることも出来たと思うのだが・・・。
ところで、どう書いていいかわからず、
映画を見てからコレを書き上げるのに2ヶ月ほどかかってしまいました。
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